三島由紀夫「命売ります」を読んで、主人公・羽仁男(はにお)が言った「無意味な人生に意味づけをする」に共感してふっと人生の肩の荷が下りたような気がしました。

エンタメ小説ですが、そんな枠すらゆうに超えていく三島由紀夫のすごさね。
「命売ります」を読了後には、「羽仁男は生への回帰を果たした?」と疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、年がら年中純文学&海外文学を読んでいるひろぺすが、三島由紀夫「命売ります」の感想・考察をお伝えします。あらすじやよくある質問も解説するので、参考にしてください。
※ストーリーの結末を記載しているため、「直接的なネタバレNG」という方はご注意ください。
三島由紀夫「命売ります」の感想・考察

三島由紀夫「命売ります」を読んで、主人公・羽仁男(はにお)が言った「無意味な人生に意味づけをする」に共感してふっと人生の肩の荷が下りたような気がしました。
ここでは、三島由紀夫「命売ります」について以下の点から感想・考察をお伝えします。
- 無意味な人生に意味づけをする
- 「生への回帰」を果たしたか
- エンタメ性に加えて文学性も感じられる作品

三島作品としては3作品目で、面白すぎて瞬読でした。
無意味な人生に意味づけをする
三島由紀夫「命売ります」のなかで、「人生は無意味であり、意味付けは自由である」という旨の羽仁男の言葉があり、読書をしていて久しぶりに肩の荷が下りる感がありました。
大抵の場合、人生に意味があると前提にするから、「意味があるはずなんだ」という重圧を感じたり、無駄に意味を探して疲れてしまったりするわけです。
本当は人生に意味があったほうがもちろん素晴らしいのでしょうが、「いや人生は無意味だから勝手に意味をつければいいじゃない」と。謎の開放感に包まれました。

後ろ向きなのに1周回って前向きになってるやつね。
本当に「生への回帰」を果たしたか
三島由紀夫「命売ります」を読んで、個人的には羽仁男は「生へ回帰していない派」です。
羽仁男は終盤で死ねるであろう環境(玲子とACSの外国人)から2度も逃げる理由は、「生きたい」ではなく「死にたくない」という印象でした(この差は大きい)。
■羽仁男は終盤で死ねるであろう環境から逃げる理由の考察
・玲子からの逃亡:
死にたがりの玲子を「厄介」「面倒」のような印象を持っており、玲子が羽仁男の鏡となって「多動的に死ぬ」ことへの意識が冷めているように見える
・ACSの外国人からの逃亡:
「命は惜しくない。無理に強制されて殺されるのは腹が立つ」という旨の羽仁男の言葉があり、”この方法では死にたくない”という心理が感じられる
また、ラストにはどこにも「生きたい」という前向きさや力強さは感じられず、ただ行き詰まりを見せて終わってしまいます。

結末は、「この方法では死にたくない」という羽仁男の傲慢さに対するアンサーだったようにも思える。
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エンタメ性に加えて文学性も感じられる作品
三島由紀夫「命売ります」は、1968年に「週刊プレイボーイ」で連載された作品で、エンタメ系に分類される作品です。しかし、文章の端々で文学性も感じられる不思議さを持ちあわせています。
羽仁男は自身について深い考察はしないものの、「人生は無意味であり、意味付けは自由である」といったエンタメ小説の枠を超えた考え方や文章表現があります。
そして、スリラー小説として本当に面白い、読み始めは夢見が悪いほどに。

THE・三島作品とはいえないものの、三島作品が苦手な私にとってはハードル下がった。
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三島由紀夫「命売ります」のあらすじ

三島由紀夫「命売ります」は、自殺に失敗した山田羽仁男(やまだ・はにお)が「命売ります」という広告を出して多動的に死のうとする物語です。
■三島由紀夫「命売ります」の簡単なあらすじ
山田羽仁男は睡眠薬の過剰摂取で自殺しようとするが、一命をとりとめる。多動的に死のうと「命売ります」という広告を出し、さまざまな依頼を受ける。たとえば、妻に復讐したい老人・自殺の実験台になって欲しい図書館勤務の女・吸血鬼の母に血を与えたい少年など。羽仁男は依頼のなかで度々耳にしてきた「ACS」なる秘密組織の男たちに誘拐されて殺されかけるが…
次の章以降で、詳しいあらすじをご紹介します。
詳しいあらすじ
三島由紀夫「命売ります」の詳しいあらすじは、以下のとおりです。
【多動的な死へ向けた「命売ります」】
- コピーライターとして働く山田羽仁男は、睡眠薬の過剰摂取で自殺しようとするが、一命をとりとめる
- 自殺しようとした理由はとくにない。新聞の夕刊を読んでいたところ、無性に死にたくなったのである
- 会社を退職して他動的に死ぬために「命売ります」という広告を出す
【依頼①家内への復讐】
- 広告を見たある老人が訪ねてくる
- 年の離れた家内・岸るり子が事業家の男と浮気をしているので、復讐したい。羽仁男と家内が関係を持ち、それを事業家の男に発見してもらえれば家内と羽仁男は殺されるであろう、とのことである
- 依頼を遂行し事業家の外国人の男とも出くわすが、羽仁男は殺されなかった。るり子からACS(アジア・コンフィデンシャル・サービス)という秘密組織の名を聞く
- 後日、るり子は隅田川で水死体で上がる
【依頼②虫の実験台】
- 羽仁男がまた命を売り始めると、中年の女が訪ねてくる
- 「日本甲虫図鑑」を20万円で購入する募集を見た矢先に、勤務先の図書館の倉庫を整理していると同じ本を発見して魔が差し、あやしげな外国人たちに売ったそうである
- 羽仁男への依頼は、さらに50万円がもらえる依頼を一緒に受けて欲しいとのこと
- 依頼とは、図鑑に記載された虫を使って自殺に見せかけて人を殺す実験台になること。また、羽仁男は女からまた「ACS」の話を聞く
- 羽仁男は薬を飲んで銃で自殺しようとするが、途中で女が遮って女のほうが死んでしまう
【依頼③吸血鬼の母親】
- 続いて、羽仁男の命を買いにきたのは学生の井上薫
- 母親が吸血鬼なので、羽仁男が死ぬまで血を吸われてほしいとのことである
- 羽仁男は了解して、井上家に住みながら薫の母親と夫婦のような生活をしながら血を吸われ続ける
- 羽仁男は貧血がひどくなっていき、今日で死ぬと予想された日に2人で最後の散歩にでかける。散歩の途中で羽仁男は貧血で倒れて病院に送られる
- 目を覚ますと井上家は燃えており、母親のみが死んでしまった
【依頼④暗号キーを取り戻せ!】
- 羽仁男の入院中に見知らぬ男が2人訪ねてくる
- 「A国の大使館から盗まれた暗号キーをB国から取り戻してほしい」という依頼である。A国からB国へスパイを派遣するものの、全員死んでしまい、それもB国大使が食べる「にんじん」を食べて死ぬのだという
- 羽仁男は話を聞いてすぐ理由がわかり、大使館に行って謎を解く。報酬として合計220万円もらう
- 羽仁男はアパートに戻ると、すぐに引っ越しをする
【死にたがりの女】
- 不動産屋で地主の娘である倉本玲子に出会い、玲子宅の離れで暮らすようになる
- 玲子は死にたがっていたが、羽仁男と玲子は若夫婦のような生活を送る
- ある日散歩をしていると、公園で最初の依頼主である老人に出会う。老人は「君は狙われている」と言う
- 玲子が寝酒に毒を盛り、羽仁男はあやうく飲みそうになる。玲子は「今死ぬのが1番幸せ」だと言い、羽仁男は「どうしても死にたくない」と矛盾した考えが浮かぶ
- 玲子の束縛は厳しくなるが、バーで玲子がトイレに入ったすきに逃げる
【狙われた男・山田羽仁男】
- ホテルに泊まると知らない男が訪ねてくる、また違うホテルに泊まるがまた知らない男が訪ねてくる。逃げる最中に腿に刺されていたのは超小型トランシーバーであった
- 羽仁男はあてもなく西武線に乗って飯能までいき、旅館に寝泊まりする
- ある日、飯能で外国人に声をかけられて道案内していると、その外国人に脅されて車で誘拐される
- 地下室に連れていかれ、そこには岸るり子の浮気相手だった事業家の外国人の男と、虫を使って自殺させようとした外国人たちがおり、自分達はACSで羽仁男は警察の一員だから尋問してから殺すのだというが…
結末については、次の章でお伝えします。「結末はちょっと…!」という方は、ぜひ本を読んで確かめてみてください。
結末【ネタバレ】
三島由紀夫「命売ります」の結末は、以下のとおりです。
- 羽仁男は持っていた箱入りの時計を爆弾だと言い張り、その場をどうにか逃げる
- 警察署で話を聞いてもらうが、羽仁男の体験はまったく信用してもらえず、もちろん保護もしてもらえない
- 羽仁男は警察署の前の階段で泣きたくなりながら煙草に火をつけ、星空を見上げて物語は終わる
「命売ります」はエンタメ小説といわれるだけあって、結末まで一瞬で読めるほどの面白さです。
個人的には、「仮面の告白」(三島作品が苦手になる)→「宴のあと」(お、面白いじゃん)→「命売ります」(エンタメ小説も書けんのかよ、しかもなんだよ面白い)で来ているのですが、「こんなに面白い作品あるなら先に言ってくれよ〜」といった読後感でした。

文章表現が面白い!意外と読める!といった方には、純文学もおすすめです。
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三島由紀夫「命売ります」に関するQ&A

最後に、三島由紀夫「命売ります」に関するよくある質問を解説するので、疑問を解消しましょう。
青空文庫で読める?
2026年1月時点では、青空文庫では読めません。
三島由紀夫「命売ります」を読みたい場合は、書店や通販で本を購入したり、図書館で借りましょう。
主人公・羽仁男の読み方は?
羽仁男の読み方は、「はにお」です。
羽仁男は広告会社でコピーライターとして働いていましたが、自殺の失敗後に自身の命を売り始めます。
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まとめ

三島由紀夫「命売ります」を読んで、「人生は無意味で、意味付けは自由」という言葉に共感してふっと人生の重圧が軽くなったような気がしました。
今回は、以下の点から感想・考察をご紹介しました。
- 無意味な人生に意味づけをする
- 「生への回帰」を果たしたか
- エンタメ性に加えて文学性も感じられる作品
三島由紀夫「命売ります」はドラマ化されているので、映像から入るのも選択肢の1つです。今回の記事を、読書ライフを満喫する参考にしてください。


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