「”文庫本”って普通に使っているけど、結局何なんだろう?」「新書との違いは?」と疑問に思う方もいるでしょう。
そもそも「文庫」って何なんだ?
結論、文庫本とは書籍の普及を目的として発行された廉価の小型叢書(そうしょ)のことで、A6サイズが一般的です。
文庫本について理解を深めておけば、今後の読書ライフがより充実すること間違いなし。
そこで今回は、文庫本の定義や新書や単行本との違いを具体的に解説します。
文庫本と単行本ならどっちがいいかについても紹介するので、参考にしてください。
文庫本とは?定義やサイズを解説
文庫本とは、書籍の普及を目的に発行された廉価の小型叢書(そうしょ)のことです。
叢書とはシリーズ本を指しますが、出版社が共通の体裁で発行する書籍も叢書と呼びます。
現在の文庫本の始まりだとされているレーベルやシリーズは、以下の通りです。
「袖珍名著文庫(しゅうちんめいちょぶんこ)」は日本の古典をメインにまとめた文庫本で、50冊程度発行されています。
私の手元にも岩波文庫創刊の1927年(昭和2年)版があり、写真の通りです。
廉価の叢書とはいえ、およそ100年経つ現在でも十分読める状態であることに感動を覚えます。
現在では一般文庫レーベルに加えて、ライトノベルや漫画文庫などのさまざまなレーベルが存在しており、まさに「文庫本文化」が根付いているといえるでしょう。
また、文庫本はA6サイズ(105mm×148mm)が一般的で、文庫本はA6判と呼ばれる場合もあります。
ただし、文庫レーベルによって微妙にサイズに違いがあります。
文庫本は本の背を糊付けして用紙でくるんだ「無線綴じ」を採用する傾向にあり、いわゆる「ペーパーバック」と同じ製本方法です。
▼ペーパーバックについてまとめた記事は、こちら。
そもそも文庫とは何か?
文庫の主な意味は、以下の通りです。
コトバンク「文庫」
- 書籍・古文書を入れておくくら。書庫。ふみぐら。
- 書冊・雑品などを入れておく手箱。文庫箱。
- 江戸深川の遊里で、遊女が着替えなどを入れた箱。仕掛文庫。
- あるまとまった蔵書。
- 同じ種類などでまとめられた出版物に付ける名。叢書。
- 廉価普及を目的とした小型本。同一の書店から継続して同一の型・装丁で発行される。
もともと文庫は「書籍を収める蔵」を意味していましたが、転じて蔵や施設などある場所に保管されている蔵書のコレクションそのものを「文庫」と呼ぶようになりました。
もっと複雑な意味があるかと思ったけど、想像以上にストレートな意味!
文庫本レーベルによるサイズの違い
文庫本の一般的なサイズはA6(105mm×148mm)ですが、レーベルによって大きさが異なります。
本棚に並べると気になるのが「高さ」であり、手持ちの文庫本でサイズを比較してみました。
高さ | レーベル名 |
---|---|
約148mm | 岩波文庫・講談社文庫・角川文庫など |
約151mm | 新潮文庫・集英社文庫・中公文庫など |
約152mm | 光文社文庫 |
約157mm | ハヤカワepi文庫 |
岩波文庫や角川文庫の約148mmと、ハヤカワepi文庫の約157mmを比較すると、およそ1cmも差があります。
本棚に並べるとこの差が意外とネックになったり、愛おしくなったりと複雑。
▼裏表紙のあらすじと文庫本レーベルによる文字数の違いを比較した記事は、こちら。
文庫本と新書や単行本との違い
文庫本と以下の書籍の違いについて解説します。
それぞれの特徴や定義を踏まえて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
文庫本と新書の違い
新書とはB6判(128mm×182mm)よりもやや小型の叢書で、教養をテーマにした内容が多い傾向にあります。
文庫本と新書の違いは、下表の通りです。
項目 | 新書 | 文庫本 |
---|---|---|
サイズ | 105mm×173mm | 105mm×148mm |
形式 | 叢書 | 叢書 |
製本方法 | 無線綴じ | 無線綴じ |
カバーデザイン | 作者や作品による違いはない | バリエーション豊富 |
ジャンル | 専門書・実用書・啓発本など | 小説・エッセイ・ビジネスなど |
スタート時期 | 1938年 | 1903〜1927年 |
文庫本と新書は叢書という点で大きな括りは同じですが、明確な違いは本のサイズ。
新書は105mm×173mmと縦長であり、文庫本と比べて3cm程度長いサイズとなっています。
また、文庫本の始まりである「袖珍名著文庫」は古典を収録することを目的としたのに対して、新書の始まりである「岩波新書」は「現代人の現代的教養」の育成を目的にしており、当初の意図にも違いがあるのも特徴です。
文庫本はカバーデザインはバリエーションが豊富なレーベルも多いですが、新書のデザインは作者などに関係なく同一な傾向にあります。
確かに純文学を収録した新書は見たことないかも。
文庫本と単行本の違い
単行本とは単独で発行される本を指しており、叢書である文庫本とは発行形式が大きく異なります。
文庫本と単行本の違いは、下表の通りです。
項目 | 単行本 | 文庫本 |
---|---|---|
サイズ | 128mm×182mm(B6判) 127mm×188mm(四六判) | 105mm×148mm |
形式 | 単行本 | 叢書 |
製本方法 | 上製本 | 無線綴じ(並製本) |
カバーデザイン | バリエーション豊富 | バリエーション豊富 |
ジャンル | 小説・エッセイ・ビジネスなど | 小説・エッセイ・ビジネスなど |
価格 | 1,000〜2,000円 | 500〜1,000円 |
単行本と文庫本には発行形式をはじめとして、サイズや価格などさまざまな面に違いが存在します。
文庫本は簡易的に綴じる並製本であるのに対して、単行本の製本方法は「上製本」。頑丈な表紙でくるんだいわゆる「ハードカバー」です。
また、単行本の刊行後に、文庫本化される流れがあるのもポイント。
現在では最初から文庫本が出版されるケースもありますが、単行本が発行して3年後に文庫本化するのが一般的です。
▼文庫本の価格推移についてまとめた記事は、こちら。
文庫本と単行本ならどっちがいい?
文庫本と単行本ならどっちがいいかは、趣向やライフスタイルによって異なります。
文庫本が向いてる人・単行本が向いている人について解説するので、本を購入する目的と照らし合わせながらチェックしてみてください。
文庫本が向いてる人
文庫本が向いてる人の特徴は、以下の通りです。
文庫本は単行本よりサイズが小さく携帯性に優れているため、移動先や移動中に本を読みたい人に向いています。
また、サイズはもちろん文庫本は単行本のように装丁が厚くないので、軽量なのも魅力。
持ち運びやすいと場所を選ばずに読めることから、読書する習慣を身につけやすいでしょう。
文庫本は単行本の価格の半額程度で購入でき、リーズナブルな価格で購入したい人にも最適。
さらに、レーベルによって多少サイズはことなるものの、文庫本はA6サイズに統一されており、本棚の統一感を重視する人もおすすめ。
背表紙のデザインもレーベルごとに揃っているため、きれいに並べることが可能です。
▼読書習慣についてまとめた記事は、こちら。
単行本が向いている人
単行本が向いている人の特徴は、以下の通りです。
単行本は文庫本よりもサイズが大きく重量があるので、自宅で本を読みたい人・移動が少ない人におすすめ。
「寝る前に本を読む」「休日にカフェで読む」といった場合には、単行本なら問題ないでしょう。
また、単行本はデザインや紙質にこだわっているケースも多く、デザイン性を重視する人に向いています。
単行本なら文庫本化の前に作品が読める傾向にあり、好きな作家の作品をいち早く読みたい人にぴったりです。
▼文庫本についてまとめたその他の記事は、こちら。
まとめ
文庫本とは、書籍の普及を目的に発行された廉価の小型叢書(そうしょ)を指します。
A6サイズ(105mm×148mm)が一般的ではあるもの、文庫レーベルによって微妙にサイズが異なるのも特徴です。
文庫本が向いている人の特徴をおさらいしましょう。
- 移動先や移動中に本を読みたい人
- リーズナブルな価格で購入したい人
- 本棚の統一感を重視する人
なお、B6判(128mm×182mm)よりもやや小型の叢書「新書」や単独で発行する「単行本」は、サイズや製本方法において文庫本と違いがあるので注意しましょう。
今回の記事を、読書ライフを楽しむ参考にしてください。
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