純文学にありがちな展開や設定とは?定義やおすすめの作品なども解説

純文学にありがちな展開や設定とは?定義やおすすめの作品なども解説 純文学のすゝめ

ミステリー小説にはミステリー小説の、SF小説にはSF小説の「ありがちな展開や設定」があるもの。もちろん、純文学にも特有のあるあるや共通点があります。

ありがちな展開が分かっていても、読書中に出てくると「キタ!」とテンションが上がる。

例えば、「とにかくお金がない、もしくはあり過ぎる」や「問題はいつまでも解決しない」などの展開・設定が挙げられるでしょう。

そこで今回は、純文学にありがちな展開や設定について作品名を交えながら解説します。

純文学の定義やおすすめの作品などについても紹介するので、参考にしてください。

純文学の定義

純文学の定義

純文学とは、芸術性を重視した小説のことです。

近代の作家としては、夏目漱石や太宰治、三島由紀夫、川端康成などがいます。現代の作家では、村上春樹や川上未映子、村田沙耶香などが有名。

純文学を扱った文学賞には「芥川賞(芥川龍之介賞)」があり、直木賞と並んで毎年大きくニュースに取り上げられます。

一方で、純文学の対局にあるのが大衆文学。大衆文学は、歴史小説や推理小説など娯楽性やエンターテイメント性に主眼を置いた小説のことを指します。

▼純文学と大衆文学の違いについてまとめた記事は、こちら。

純文学にありがちな展開や設定

純文学にありがちな展開や設定

純文学にありがちな展開や設定は、以下の通りです。

純文学にありがちな展開や設定
  • 貧乏or超お金持ち、経済事情が両極端になりがち
  • 問題が未解決のままになりがち
  • びっくりするほど突然に長話が始まりがち
  • とんでもないバッドエンドが待っていがち
  • お姉さま口調が極まっている登場人物がいがち

それぞれの状況について、作品例を挙げながら詳しく解説していきます。

貧乏or超お金持ち、経済事情が両極端になりがち

純文学にありがちな展開や設定1つ目は、「貧乏or超お金持ち、経済事情が両極端になりがち」なところ。

近代の純文学といえば、教育機関を卒業後に仕事をせず悠々自適に暮らしている「高等遊民」をイメージする方も多いでしょう。

夏目漱石「こころ」に登場する「先生」や、「それから」の主人公「長井代助」、川端康成「雪国」の主人公「島村」などは、遺産暮らしをしたり、親のすねをかじったりしています。

あとは、謎の「書生」という職業もある!

一方で、「とにかくお金がない!」といったパターンもあります。

夏目漱石の「門」や「道草」はお金の工面の話をしているイメージが強く、ドストエフスキーの「罪と罰」や「貧しき人々」も困窮した暮らしぶりが印象的です。

ただ毎回「お金がない」「お金がない」と言いつつも、なぜか生活が回っているところはいつも不思議

経済状況があまり関係ない作品ももちろんありますが、ファンタジー級に極度な設定もあり、注目ポイントの1つです。

問題が未解決のままになりがち

問題が未解決のままになりがち

純文学にありがちな展開や設定2つ目は、「問題が未解決のままになりがち」です。

元々ストーリーの起伏がない純文学。問題が解決せず終了することもしばしばあります。

夏目漱石が最たるもので、「門」や「行人」は読み終わりに思わず「な、何も解決しないじゃん…!」と思わず言ってしまったほど。

人生の問題は仏門を叩こうが、旅に出ようが、容易には解決できないという真実が物語で描き出されているのが特徴です。

織田作之助を読むと「解決しない!いや、むしろ悪化!そして身も蓋もない!」と一種の清々しさすら覚えます。

びっくりするほど突然に長話が始まりがち

純文学にありがちな展開や設定3つ目は、「びっくりするほど突然に長話が始まりがち」なところ。

独白や手紙など、さまざまな手段がありますが、登場人物の個々の話が長い印象を受けるのはドストエフスキーでしょうか。

例えば「白痴」の中ではイポリートという登場人物による「わが必要欠くべからざる弁明」という手紙というか独白を聞くシーンがありますが、文庫本で50ページくらいあります。

ドストエフスキーに対しては「仕方ないから付き合うよ精神」が大切。

あとは埴谷雄高の「死霊」も話が長くて、「長話キタ!」と思いつつも、めげそうになった記憶があります。

とんでもないバッドエンドが待っていがち

純文学にありがちな展開や設定4つ目は、「とんでもないバッドエンドが待っていがち」です。

とんでもないバッドエンドを挙げ始めたら、ほぼ当てはまるのではないかと思われる純文学。

今までに衝撃的なエンディングだったのは、以下の5作品です。

衝撃的なエンディングだった純文学作品
  • 有島武郎「或る女」
  • 夏目漱石「それから」
  • ヘルマン・ヘッセ「車輪の下」
  • ドストエフスキー「悪霊」
  • ジョージ・オーウェル「1984」

読み終わりの「うわぁっ」と感が堪らない作品ばかり。しかし、謎の感動もあって号泣した記憶があります。

主人公がいなくなるという結末はもちろん衝撃なのですが、それ以上のエンディングがまだまだあるのかと毎回感慨深い思いでいっぱいです。

▼バッドエンド系の純文学作品をまとめた記事は、こちら。

お姉さま口調が極まっている登場人物がいがち

純文学にありがちな展開や設定5つ目は、「お姉さま口調が極まっている登場人物がいがち」なところ。

例えば、純文学に出てくるお姉さま口調は以下の通りです。

純文学に出てくるお姉さま口調
  • お母さま・お父さまなど
  • 〜かしら
  • 〜わ(でしたわ・かもしれないわ)
  • 〜のよ(していましたのよ)

特に川端康成や太宰治など、近代の純文学で女性が出てくると、比較的高い確率でお姉さま口調で話している印象があります。

一方で、方言で話していたり、飾らない言葉で会話したりしている女性もおり、お姉さま口調はメジャーだったのかいつも気になるところ。

しかし、純文学の男性作者による女性の描写には目を見張るものがあります。有島武郎・三島由紀夫・川端康成など、いつ読んでも女性として共感するポイントが多いです。

▼純文学や読書についてまとめた記事は、こちら。

純文学のおすすめ作品

純文学のおすすめ作品

「これから純文学を読んでみたい!」という場合のおすすめ作品は、以下の2種類です。

純文学のおすすめ作品
  • 高校の現代文で習う作品
  • 中学校の国語で習う作品

一度読んだ経験があるからこそ、作品に対してのハードルが低く、取り組みやすいでしょう。

▼初心者におすすめな純文学作品をまとめた記事は、こちら。

高校の現代文で習う作品

高校の現代文で習う作品は、以下の通りです。

高校の現代文で習う作品
  • 夏目漱石「こころ」
  • 中島敦「山月記」
  • 森鴎外「舞姫」
  • 芥川龍之介「羅生門」

中学で習った作品よりは記憶が少なからず残っているという方も多いでしょう。

いずれも面白く、高校生のときとは違った感覚で読めるので、どの作品もおすすめです。

私ももともと読書が得意ではありませんでしたが、夏目漱石「こころ」や太宰治「人間失格」をきっかっけに純文学に夢中になりました。

読書が苦手という場合には、なるべくページ数が少ない作品や短編集を選ぶとストレスなく読めます。

参考元:
三省堂|高校国語教科書 出典一覧(現代文)
新潮社|教育出版

中学校の国語で習う作品

中学校の国語で習う作品は、以下の通りです。

中学校の国語で習う作品
  • 太宰治「走れメロス」
  • 森鴎外「高瀬舟」
  • 夏目漱石「坊っちゃん」
  • 宮沢賢治「注文の多い料理店」

高校で扱う作品よりは比較的読みやすい作品が多いので、初心者でも最後まで読み切ることができるでしょう。

私の場合は「走れメロスは、何で走ってたんだっけ?」で太宰治の「走れメロス」を再読しました。

新潮社の文庫本で読みましたが、「走れメロス」の他にも「富嶽百景」や「女生徒」なども収録されており、結果さまざまな作品にも触れられました。

難易度が高い作品や長編の作品は最後まで読みきれない可能性が高いので、覚えている作品や少しでも興味のある作品がおすすめです。

参考元:
奈良県立図書情報館|「教科書に載っている本~中学校の国語の教科書~」図書リスト
光村図書出版|出典一覧 中学校 国語

まとめ

純文学にありがちな展開や設定とは?まとめ

純文学とは、娯楽性よりも芸術性を重視した小説のこと。

純文学にありがちな展開や設定として、「貧乏or超お金持ち、経済事情が両極端になりがち」「問題が未解決のままになりがち」など5つを紹介しました。

「これから純文学を読もうと思っている」という場合には、高校の現代文や中学校の国語で学ぶ作品から取り組むと最後まで読み切れるでしょう。

今回の記事を、純文学を楽しむきっかけにしてください。

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