「ドストエフスキーの白痴を読む前に、あらすじを知りたい」「ドストエフスキーの白痴ってどんな作品なの?」と感じている方も多いでしょう。

いやー、かなり面白い作品です、面白いんですが…長い!
結論、ドストエフスキー「白痴」は、癲癇(てんかん)持ちで純粋な心の持ち主であるムイシュキン公爵を中心に展開する恋愛模様や遺産相続などの混乱と騒動が描かれた作品です。
ドストエフスキー「白痴」は上下巻とボリュームが多く、読む前にある程度あらすじを知っておきたいもの。
そこで今回は、ドストエフスキー「白痴」の概要・あらすじを紹介します。ドストエフスキー作品の読む順番についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
- ドストエフスキー「白痴」はドストエフスキーの長編小説の1つで、ムイシュキン公爵を通して「完全に美しい人間」を描こうとしたとされています。
- ドストエフスキー「白痴」のあらすじや、レビュー・おすすめ度を紹介するので、参考にしてください。
- ドストエフスキーを読む順番として、最初は「地下室の手記」をおすすめします。
ドストエフスキーとは

ドストエフスキーこと、フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキーはロシアを代表する作家の一人で、主に19世紀中盤〜終盤に作品を発表しました。ドストエフスキーの概要は、以下のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
誕生〜死没 | 1821〜1881年 |
活動期間 | 1846〜1880年 |
デビュー作 | 貧しき人びと(1846年) |
主な作品一覧 | 【5大長編】 ・罪と罰(1866年) ・白痴(1868年) ・悪霊(1871年) ・未成年(1875年) ・カラマーゾフの兄弟(1880年) |
ドストエフスキーの小説は世界中で親しまれており、作品の内容が普遍的で人間社会の真理をついた内容から「現代の預言書」と呼ばれています。
今回紹介する「白痴」は5大長編の1つに含まれ、ドストエフスキーについて理解を深めたい場合には必読の1冊です。
ドストエフスキー「白痴」の作品概要

「白痴」はドストエフスキーの長編小説の1つで、5大長編のなかでは2番目の作品となります。具体的には、1868年に雑誌に掲載されており、「罪と罰」「賭博者」の次に発表された作品です。
ちなみに、タイトルである「白痴」には以下のような意味があります。
① 知能程度がきわめて低い者。しれ者。たわけ。
引用元:コトバンク|白痴・白癡(はくち)とは? 意味や使い方
② 精神遅滞のうち最も重度(知能指数二〇以下)のものをかつて区分して呼んだ語。
ドストエフスキー「白痴」は、日本語訳で以下の6社から出版されています。
- 光文社古典新訳文庫/亀山郁夫訳
- 新潮文庫/木村浩訳
- 河出文庫/望月哲男訳
- 岩波文庫/米川正夫訳
- 講談社/北垣信行訳
- 筑摩書房/小沼文彦訳
どの出版社でだれの訳を読むかは好みの問題ですが、個人的には「文学は新潮文庫でまず読むべし精神」を持っているので、新潮文庫で読みました。
項目 | 内容 |
---|---|
出版社 | 新潮社 |
題名/著者 | 白痴/フョードル・ドストエフスキー |
訳 | 木村浩 |
ページ数 | 上巻:731ページ 下巻:560ページ |
ドストエフスキー「白痴」のあらすじ

ドストエフスキー「白痴」のあらすじについて、以下の点から紹介します。
- 「白痴」のあらすじ
- 「白痴」の結末【ネタバレあり】
「まず、どういう作品か知りたい」という方は、参考にしてください。
「白痴のあらすじ
ドストエフスキー「白痴」の主人公は癲癇(てんかん)持ちで純粋な心の持ち主であるムイシュキン公爵で、公爵を中心に展開される恋愛模様や遺産相続などの混乱と騒動が描かれています。
「白痴」のあらすじは、以下のとおりです。
- 物語はムイシュキン公爵が、ロゴージンとレーべジェフに列車で出会うところから始まる。ムイシュキン公爵は癲癇(てんかん)持ちで、スイスで療養した帰りだった
- ムイシュキン公爵は、ロゴージンが狙っているという見目麗しいナスターシャ・フィリポヴナについて耳にする
- 公爵にとって親戚にあたるエパンチン将軍夫人を訪ねて、アレクサンドラ・アデライーダ・アグラーヤの3姉妹に気に入られる
- 公爵は将軍の秘書ガウリーラが金のためにナスターシャと結婚しようとしていることを知り、結婚を中止にさせるべく夜会へ行くことを決心する
- ナスターシャは夜会にて公爵とガウリーラの求婚をしりぞけて、ロゴージンと一緒に去ってしまう。が、ナスターシャはその後ロゴージンのもとから姿を消す
- 公爵はロゴージンのもとを訪ねる。あと少しのところでロゴージンに襲われるところだったが、癲癇(てんかん)の発作により逃れる
- ナスターシャやロゴージンの問題がありつつも、その他の遺産相続問題やガウリーラの父親問題などが展開。公爵はアグラーヤと距離を縮めて結婚することを決意する
- エパンチン家で公爵を披露する夜会が開かれるが、公爵が客を巻き込んで討論を始めてしまい夜会を台無しにしてしまう
- そして、公爵・アグラーヤ・ナスターシャ・ロゴージンの4人で会うことになるが…
結末については次の章にて解説するので、「ネタバレNG!」という方は、飛ばして読んでください。
「白痴の結末【ネタバレあり】
ドストエフスキー「白痴」の結末は、以下のとおりです(クリック・タップで広げてください)。
- ナスターシャとアグラーヤが口論となり、公爵はアグラーヤの味方をしきれず、アグラーヤはその場を去ってしまう
- 公爵はナスターシャと結婚することになるが、結婚式当日にナスターシャはまたもやロゴージンと逃亡する
- 公爵はロゴージンの家を訪ねると、ロゴージンの手によって息の根を止められたナスターシャを目にする。公爵とロゴージンはそのまま部屋で過ごす
- 結末:公爵は白痴の状態に戻ってスイスへ療養、ロゴージンはシベリア流刑、アグラーヤは亡命伯爵と不幸せな結婚を果たす
特に公爵・アグラーヤ・ナスターシャ・ロゴージンの4人で会うパートから、「ここで何も起こらないなんてことないじゃない!」と一気に読了しました。
ナスターシャの「あの娘をとるの?あの娘をとるの?」のセリフには、ゾクゾクが止まりません。
「白痴」はドストエフスキー作品の中で重大な展開を迎えるまでに時間のかかる作品ですが、描写が丁寧なだけに結末は「そりゃあ、そうなるよね」と納得感の強く持てる作品でした。
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ドストエフスキー「白痴」のレビュー・おすすめ度

項目 | 内容 |
---|---|
面白さ | ★ ★ ★ ★ ☆ |
読みやすさ | ★ ★ ☆ ☆ ☆ |
忍耐度 | ★ ★ ★ ★ ★ |
初心者おすすめ度 | ★ ☆ ☆ ☆ ☆ |
見どころ | ・ご婦人たちの気狂いツンデレさ ・面白くなるまで1,000ページの助走 ・またもや世の中の真理を言い当ててしまう |
ドストエフスキーは白痴のムイシュキン公爵を通して「完全に美しい人間」を描こうとしたとされています。物語全体を通して全てを許容し、苦しむ人を見捨てられない公爵の姿勢にその意図はよく出ています。
が、いかんせん長い!
冒頭が登場人物の出会いから始まるので、「これは…いつもより話が早いぞ!」と期待したものの、展開しそうでしないを繰り返します。ナスターシャの過去話や公爵の発作が起きるタイミングで、面白くなるスイッチが入ったかもと思いましたが、そうは問屋が卸してくれない。
ドストエフスキーは面白くなるタイミングが比較的明確ですが、およそ1,300ページ中1,000ページが助走だったのでは…と。折り返しぐらいから、「おやおや、とんでもないツンデレ女たちに絡まれ続ける純朴な公爵で終わるのか」と頭をよぎる瞬間もありました。

そこそこに忍耐力を問われるので、いくつかドストエフスキーや海外文学を読んでから挑戦するのがおすすめです。
しかし、断然結末に必然性を感じるため、やたら長い助走も無駄じゃないと感じます。また、白痴とされる公爵がかなりまともなことを主張しており、社会的に身分が高い人たちが明らかにおかしく、相変わらず世の中を痛いくらいに言い当てている感じがとても怖い。
そして、「完全に美しい人間」が他者にある一定の優しさを与えられるとしても、自分を含めて全ての人を救えないのもまた感慨深いものがあります。
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ドストエフスキーを読む順番

ドストエフスキーを読む順番に正解はないものの、以下の理由から個人的には「地下室の手記」から読むのがおすすめです。
- ページ数が5大長編と比べて少ない
- あまり人間関係が複雑でない
- ドストエフスキーの考えがよく表れている
「地下室の手記」のページ数は、250ページ程度(新潮文庫)と他の長編作品と比較すると少なめです。私は「地下室の手記」→「罪と罰」→「カラマーゾフの兄弟」と読んでいきました。
どの文学作品も「最後まで読む」ことが重要ですが、面白いものかどうか分からないままでは最後まで読めません。
「地下室の手記」が面白かったからこそ他の作品の前置きがどれだけ長くても読めるし、他の文学作品が途中どんなにつまらなくても最後まで読めるのはドストエフスキーのおかげです。
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ドストエフスキー「白痴」のあらすじに関するQ&A

最後に、ドストエフスキー「白痴」のあらすじに関するよくある質問を解説するので、疑問を解消しましょう。
ドストエフスキーの五大長編とは?
ドストエフスキーの五大長編とは、「罪と罰」「白痴」「悪霊」「未成年」「カラマーゾフの兄弟」です。
なお、「未成年」はとりわけ難解な作品とされており、他の作品と比べると知名度がやや低いため、「未成年」を除いた4作品を四大長編とするケースもあります。
ドストエフスキーの代表作といえば?
ドストエフスキーの代表作といえば、「罪と罰」や「カラマーゾフの兄弟」などの5大長編だといえます。
なかでも「カラマーゾフの兄弟」は、イギリスの小説家であるサマセット・モーム選出の「世界の十大小説」の1作品として数えられています。
まとめ

ドストエフスキーの5大長編の1つである「白痴」は、癲癇(てんかん)から回帰したムイシュキン公爵を通して「完全に美しい人間」を描こうとしたとされています。
ドストエフスキーの「白痴」は、面白くなるまでに時間がかかるので、ドストエフスキーを何作か読んだり、海外文学を読んだりしている方に最適です。
ドストエフスキーを読むのであれば、比較的ページ数の少ない「地下室の手記」から読むのがおすすめ。今回の記事を参考にしながら、読書ライフを楽しんでみてください。
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