「文庫本の裏表紙のあらすじは誰が書いているの?」と疑問に感じる方も多いでしょう。

書店では、文庫本の裏表紙のあらすじを熟読する派です。
結論、文庫本の裏表紙に書かれているあらすじは、出版社の編集者が作成しています。読書好きなら文庫本の隅々まで知っておきたいもの。
そこで今回は、「文庫本の裏表紙のあらすじは誰が書いている?」をテーマに作成者などを解説します。
部位の名称やカバー下デザインも紹介するので、参考にしてください。
- 文庫本の裏表紙に書かれているあらすじは出版社の編集者が書いており、あらすじの字数は出版社によって異なります。
- 文庫本の裏表紙を含めた部位の名称として、「天」「小口」などを画像付きで解説します。
- 文庫本のカバー下のデザインを出版社別に紹介するので、チェックしましょう。
文庫本の裏表紙のあらすじは誰が書いている?

文庫本の裏表紙のあらすじは、出版社の担当編集者が作成しています。なお、あらすじの字数は出版社によって異なり、所有している文庫で測定したところ、以下のとおりでした。
- 新潮文庫:16文字×11行(176文字)
- 岩波文庫:裏表紙のあらすじなし
- 角川文庫:14文字×14行(196文字)
- 文春文庫:15文字×10行(150文字)
- 講談社文庫:18文字×8行(144文字)
- 幻冬舎文庫:20文字×8行(160文字)
- 中公文庫:20文字×14行(280文字)
- 河出文庫:14文字×10行(140文字)
上記は実測値で、作者などの条件によって異なるので、おおよその数値です。「タモリ倶楽部」(テレビ朝日系)では新潮社の担当者の方が「15文字×12行」としていることから、最大180字とも考えられます。
また、岩波文庫の裏表紙には、基本的にあらすじは書かれていません。

岩波文庫の場合は、表側に要約や紹介文が書かれている場合があります。
ちなみに、文庫本の裏表紙のあらすじは「ウラスジ」とも呼びますが、編集者の方からは「表4」との回答が多く、世間と現場との食い違いもあるようです。
表4は雑誌などで裏表紙を指す言葉で、出版界の共通した表現を利用している可能性があるでしょう。
さらに、文字調整には「ー(ダーシ)」や「…(3点リーダー)」を利用する場合もあります。

確かにテンションというか雰囲気が毎回違うなとは思ってたけど、編集者さんによる違いだったのか。
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文庫本の裏表紙のあらすじパターン
文庫本の裏表紙のあらすじパターンは、以下のとおりです。
- 本文要約
- 本文引用
- 名言(本文引用)
- 作者の紹介
- 作品の時代背景
- 作品リスト
新潮文庫の中でも夏目漱石などは「名言(本文引用)+あらすじ+キャッチコピー」の組み合わせとなっており、本文引用の名言も毎回なかなか秀逸なチョイス。

短編集は著者の紹介・作品の時代背景や、簡単な紹介とともに作品リストが掲載されている場合があります。
また、本文や解説の一部を引用していたり、冒頭に特化して要約していたりするなど、本によってさまざまです。

150〜200文字のあらすじの世界。読み直すのも面白い、かも。
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文庫本の裏表紙を含めた部位の名称

文庫本の裏表紙を含めた部位の名称は、以下のとおりです。
- 裏表紙:表紙から背を挟んで反対側の部分
- 天:本の上の部分
- 地:本の下の部分
- 小口:本を開く側
- そで:内側に折り込んだカバー部分
- 背:小口の反対側で本を束ねる部分
- スピン:本文と背の間に固定されたしおり紐
表紙や裏表紙程度の言い回しであれば日常的にも使いますが、「天」「地」「小口」など聞きなれない言葉が多いでしょう。
小口は本を開く側を指しますが、広義では天や地を含む場合もあります。ただし、背の反対側を意味するのが一般的です。また、下部分にキャッチコピーなどが書かれた紙「帯」が巻かれているケースもあります。
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本に挟むやつの名前は?
本に挟むやつの名前は「スピン」で、「しおり紐」や「リボン」と呼ばれる場合もあります。スピンは、背表紙に糊などで直接取り付けられているのが一般的です。
文庫本などに直接取り付けられた紐状のしおりを「スピン」と呼ぶのは日本のみです。

英語での呼び名は「ブックマーク(bookmark)」「ブックマーカー(bookmarker)」となります。
現在スピンを文庫本に採用しているのは新潮文庫のみであり、過去には岩波文庫などが採用していました。
また、新調文庫はスピンを取り付けるために、文庫本の上(天)を不揃いにする「天アンカット」を採用しているのも特徴です。
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本の間にある紙の名前は?

本の間にある紙の名前は「売上スリップ」で、その形状から「短冊」と呼ばれるケースもあります。短冊上部の丸い突起部分の通称は「ぼうず」です。全体的にフォルムに近い名前が付いています。
もともとは売上を管理したり、消費税率を表記したりする役割がありましたが、デジタル管理が発達したことから書店側で回収する必要がなくなりつつあるのも特徴です。
売上スリップはコミックに挟まれている印象の強いですが、個人的には文庫本に挟まれているイメージはあまりなく、写真もやっと見つけました。

新品から中古まで、本棚を結構探して発見。
文庫本のカバー下のデザイン

コミックのカバー下同様に、文庫本のカバー下も出版社ごとに色があり、注目したいポイントです。
各出版社のカバー下の主なデザインは、以下のとおりとなります。
- 新潮文庫:アールヌーボー調の葡萄
- 岩波文庫:壷マーク
- 角川文庫:鳳凰
- ちくま文庫:太陽と月のマーク
- 幻冬舎文庫:原始人とマンモス
また、年代ともにカバー下のデザインが変わったり、変わらなかったりするのも興味深い点。
まず新潮文庫。あまり古い本は所有していませんでしたが、昭和53年(1978年)刷と令和4年(2022年)刷のデザインはほぼ変わりがありませんでした。

続いて、岩波文庫は昭和2年(1927年)刷と平成21年(2009年)刷を比較すると、サイズ以外はほぼ同じのデザインでした。「もはや伝統と言えるレベルなのでは…?」と思っているのは私だけではないはず。

そして、角川文庫は鳳凰のイメージが強いものの、さまざまなバリエーションがあります。
昭和51年(1976年)刷(左)と令和2年(2020年)刷(中央)はアジサイなど同じモチーフが描かれていますが、平成20年(2008年)刷(右)はお馴染みの鳳凰です。
ちなみに、令和2年(2020年)刷(中央)は裏面に鳳凰がいますが、昭和51年(1976年)刷(左)には鳳凰は描かれていません。

個人的には表紙に鳳凰が描かれているデザイン(右)の印象が強く、横溝正史の旧デザインを購入し始めて驚きました。裏表紙のあらすじと一緒にカバー下のデザインを比較するのも、おすすめです。

文庫本!奥深し!
まとめ

文庫本の裏表紙のあらすじは、出版社の担当編集者が作成しており、文字数や形式は文庫レーベルによって異なります。文庫本の裏表紙のあらすじパターンは、以下のとおりです。
- 本文要約
- 本文引用
- 名言(本文引用)
- 作者の紹介
- 作品の時代背景
- 作品リスト
文庫本は裏表紙以外にも、付属している紐状のしおり「スピン」や本を開く側「小口」など特殊な名前が付いています。
また、文庫本のカバー下デザインも裏表紙のあらすじ同様に出版社によって違いがあるので、比較してみるのも楽しいでしょう。今回の記事を、読書ライフを楽しむ参考にしてください。
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