1年365日読書に取り組まない日はない訳ですが、主に読むジャンルは文学(厳密に言うと純文学)です。
だいたい「文学つまらないでしょ?」と言われます。
私も高校・大学時代までは全く興味がなかったので、もちろん共感する部分も。
ただ、個人的にはこんなに「何度読んでも面白くて」「心から共感できて」「作家の一生を思って読める」ジャンルはありません。
社会人になってから文学沼から抜け出せずにいる私の、夢中になった理由や思い出に残る作品をまとめました。
文学はつまらない|国語が苦手だった高校時代
正直、高校生や大学生のときは、文学はつまらないものだと思っていました。
教科書で文学作品を読んで「面白い!」と感じた経験もなければ、そもそも朝の読書の時間以外に本を読む習慣もありませんでした。
そもそも、現代文が得意じゃなかった…
たとえば、夏目漱石の「こころ」。Kが登場した記憶はあり、先生の手紙のあたりということだけ覚えています。
森鴎外の「高瀬舟」なら「足ることを知る」とか、その程度の記憶です。
高校・大学時代はゲーム・アニメ・漫画に明け暮れており、オタク道まっしぐら。それはそれで楽しかったものの、あの頃に戻れるなら「(将来的に海外文学も読むから)世界史と宗教はちゃんと学んでおけ」と言うでしょう。
そんな順風満帆なオタクライフも暗黒社会人時代に突入することによって、局面が変わっていきます。
文学こそ面白い|世はまさに暗黒社会人時代
文学や読書の楽しさを実感したのは、社会人になってからです。
そう、世はまさに暗黒社会人時代。
社会人に出てから文学を読んで面白いと感じたのは、以下のポイント。
最初は太宰治の「人間失格」や夏目漱石の「こころ」を読んで、文章の美しさに単純に感動していたのですが、途中からただならない共感を覚え始めて熱中して読むようになりました。
当時いわゆるブラックな会社に勤務しており、社長が宗教に熱心になって意味の分からないことを言い出したり、深夜まで企画書を書いたりするような生活。
安易なハッピーエンドとか温い優しさしかない映画やドラマに出会うと、「どんだけイージーモードだよ(乾いた笑い)」と。
そんな暗黒期によく読んでいたのが、夏目漱石でした。
「門」が最たるものですが、基本的に漱石の作品は問題が解決しないのが大前提なので、「そうか、そうだよな。早々に解決するはずないよな」と尋常じゃない共感がありました。
そこからスイッチが入って、文学沼がスタート。10年以上経ちますが、全くもって抜けられる気がしません。
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思い出に残る作品
思い出に残る作品は、以下の3つです。
上記の作品はもちろん、本棚で背表紙を眺めていると、読んでいた頃の記憶やエピソードが思い浮かびます。
ヘッセ「車輪の下」|父からの唯一の推薦図書
高校生だった頃、読書好きの父に教えてもらったのがヘルマン・ヘッセの「車輪の下」(新潮文庫)。
翌日には買ったのですが、いつもハンスが神学校で弱り始めたあたりで諦めるのを繰り返していたため、読み切るのに実に10年くらいかかりました。
決して幸せではないラストを読んで、「何でこれがオススメだったんだ?」と今でも疑問です。
父は数年前に亡くなってしまったので結局聞けずじまい。また、姉への推薦図書は司馬遼太郎の「燃えよ剣」で、「この違いは何の!」と驚きました。
ただ、最終的にこの手の本が大好物になる、一種のめんどくささを私が持っていることに気づかれていのかもしれません。
大当たりだったぜ、父よ…
坂口安吾「文学のふるさと」|つまり、そういうこと
文学を読むと感じる「救いのない救い」を解決してくれたのが、坂口安吾「文学のふるさと」(ちくま文庫)。
安吾の文学観がまとめられている文章で、「魂の孤独には救いがなく、救いのないこと自体が救いである」といったことが書かれています。
不思議なもので、文学作品は救いがなければ救いがないほど、共感や満足感が強い印象があります。人間の根幹レベルでの共感があるというか。
もちろん、「バッドエンドを迎える登場人物を読者の境遇より下位であることに安心する」といったことではありません。
文学を読む理由に、「この感覚を探求したい」という気持ちもあります。
大西巨人「神聖喜劇」|暗黒期を支えてもらった
暗黒社会人時代season2を支えてくれたのが、大西巨人の「神聖喜劇」(光文社文庫)。
当時、大きな組織の人間関係とパワーバランスの影響で弱っていた私は、二等兵として奮闘する主人公・東堂太郎に対する感情移入は海よりも深いものがありました。
今でもラストに差し掛かる場面に引用される詩で号泣したことを忘れません。
また、大西巨人は詩・漢文・古文・法律などの引用が多いのですが、難易度が高くて心が折れたため、途中3ヶ月くらい本の厚さを眺めて過ごしたのも良い思い出。
結局、読み切るのに半年くらいかかり、読み終わりの達成感は過去No.1です。
文学からしか摂取できない何かが、ある
高校・大学時代からは一変して、読書に夢中にになった社会人。「人生どこでどんな趣味を持つかは分からないものだな」と思いつつ、文学沼はまだまだ抜けられそうにありません。
1年の中でも意欲が高まるとき・モチベーションが下がるときなど、振り幅があるものの、読書と風呂と運動だけは裏切らないといつも思います。
毎年思い出深い作品が増えていくのも楽しみの一環です。
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