1906(明治39)年に発表された夏目漱石の「坊っちゃん」。
100年以上経過した現代でも愛読される「坊っちゃん」について、あらすじや舞台が気になる方も多いでしょう。

「坊っちゃん」を再読してから、愛媛県松山市へ行ってきました。
結論、夏目漱石の「坊っちゃん」は無鉄砲な性格を持つ主人公が四国の中学校教師として赴任し、生徒からの悪戯や他の教師との対立に立ち向かう物語で、舞台は愛媛県松山市とされています。
そこで今回は、夏目漱石「坊っちゃん」のあらすじ&舞台を徹底解説します。書き出しや名言も紹介するので、最後までご覧ください。
夏目漱石「坊っちゃん」のあらすじ

夏目漱石「坊っちゃん」のあらすじについて、以下のケース別に解説します。
- 簡単版
- 詳細版
「どんな話だっけ?」と疑問をお持ちの方も、「ストーリーを深く知りたい」とお考えの方も、ぜひ参考にしてください。
※ストーリーの結末を記載しているため、「直接的なネタバレNG」という方はご注意ください。
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簡単版
夏目漱石「坊っちゃん」の簡単なあらすじは、以下のとおりです。
■「坊っちゃん」の簡単なあらすじ
親譲りで危険を顧みない無鉄砲な性格を持つ「坊っちゃん」が東京から四国の中学校に数学教師として赴任し、生徒からの悪戯や他の教師との対立・悪知恵に立ち向かう物語。具体的には、教頭である赤シャツが同僚教師のうらなり君の結婚相手・マドンナを横取りし、うらなり君を転任させたこと、同僚教師の山嵐を辞職に追い込んだことで、赤シャツをこらしめようとする。並行して坊っちゃんを可愛がってくれた元女中の清との関係も描かれ、痛快ながらも暖かさを感じられる作品である。
上記のような物語から、夏目漱石「坊っちゃん」は青春小説やユーモア小説に分類され、児童文学としても親しまれています。

「坊っちゃん」を学校の図書館で見かけた方も多いのではないでしょうか。
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詳細版
夏目漱石「坊っちゃん」の詳細なあらすじは、以下のとおりです。
生い立ち
- 親譲りで危険を顧みない無鉄砲な性格であることなど、坊っちゃんの性格やいたずらエピソードが語られる
- 父には可愛がってもらえず、母は坊っちゃんの兄を贔屓にしていた。清という下女が坊っちゃんを大変可愛がっており、「真っ直ぐでいい性格だ」と誉めてくれた
- 母と父が死亡したため、財産を分けて兄とは別々に暮らすことになる
- 坊っちゃんは物理学校に入り、卒業後に四国辺の中学校で数学教師の空きがあるという話をもらい、とくに当てもなかったため、四国行きを即決した
四国への赴任
- 船や汽車を使って四国へ移動し、宿屋・山城屋に到着する。翌日、学校に出勤して、校長との面会後に他の教師に挨拶する。見た目の特徴などから、各教師に以下のようなあだ名をつける
■坊っちゃんの登場人物とあだ名
校長 → 狸(薄髭・色が黒い・眼が大きい)
教頭 → 赤シャツ(文学士・女のような優しい声・フランネルのシャツを着用)
英語教師の古賀 → うらなり(顔色が悪い・ふくれている)
数学教師の堀田 → 山嵐(毬栗坊主・叡山の悪僧のような面構え・韋駄天)
画学教師 → のだいこ(芸人風・透綾の羽織・扇子)
- 山嵐の推薦で町はずれの家に下宿する。主人は骨董を売買しており、女房は魔女に似ていた
- 学校で授業をスタートさせ、規則正しく働く日々が続く。そして帰宅すると主人が茶をいれて、美術品の購入を斡旋されて閉口する
生徒の悪戯
- ある日、蕎麦屋で天麩羅を4杯食べると次の日に黒板に「天麩羅先生」と書かれる。また、温泉がある住田で団子2皿を食べると、次の日に学校に行くと「団子2皿7銭」と書いてあった
- 続いて、毎日温泉に行く際に手拭いを下げている姿から生徒に「赤手拭い」とも言われた
- 温泉で泳いでいたら温泉場に「湯の中で泳ぐべからず」と札が貼られたうえに、学校の黒板にも同じことが書かれた
- 宿直の担当で学校に泊まる際は、布団にバッタが大量に入っていたり、寄宿舎の2階から一斉に床板を踏み鳴らす音がしたりして、生徒の仕業だと判断して生徒と押し問答していると狸が来て一旦場が収まる
他の教師との関係
- 赤シャツから釣りに誘われて、野だ(のだいこ)と一緒に行く
- 野だは終始赤シャツのご機嫌を取り、会話のなかで野だが赤シャツに「今夜はマドンナに会うのですか」と言う言葉を聞く
- 赤シャツが「君の前任者がいいように利用されたので気をつけるように」と言われるが、誰が仕掛けたのかは教えてもらえなかった(しかし、文脈上は山嵐だと推測できた)
- 山嵐に直接話そうかと思ったが、赤シャツに止められる。そんな信用できない山嵐に以前氷水を奢られたことが気になって1銭5厘を山嵐の机に置いておくと、その理由を聞かれる。あわせて身に覚えのない理由から「下宿を出てくれ」一方的に言われる
- 坊っちゃんに無礼を働いた寄宿生の処罰について話し合う会議があり、狸と赤シャツは穏便に済ませようとする。すると、信用ならないはずの山嵐が生徒には厳罰と坊っちゃんに対して謝罪するように提案し、坊っちゃんは戸惑う
- 赤シャツが「中学教師は精神的娯楽を求めなくてはならない」と言うのに対して、坊っちゃんは「マドンナとの逢瀬も精神的娯楽か」と尋ねるとなぜかうらなり君が顔を青くした
赤シャツの悪知恵
- 坊っちゃんは下宿を引き払って、地元民であるうらなり君を頼って新しい下宿を探す
- うらなり君の紹介で老人夫婦宅の新たな下宿先を得る。下宿先のおばあさんから、噂のマドンナがうらなり先生と結婚の約束をしていたが、家庭の事情で結婚が延期されていたところを赤シャツがマドンナをほぼ横取りしたと聞く
- 湯へ行く際に、うらなり君・マドンナ・マドンナ母・赤シャツを見かける
- 山嵐との関係とは反対に、赤シャツとの関係は維持したままの坊っちゃんは、ある日赤シャツ宅に呼ばれて、「転任者が出るため増給できるように校長に話す」と言われる。ただし、転任者はうらなり君であった
- 下宿に帰ると、おばあさんからうらなり君は「本当に望んで転任するのではない」と聞き、赤シャツのマドンナを手に入れるための策略だと感じる
- 坊っちゃんはまた赤シャツの家に行って、「増給の件は嫌になったのでなしにしてほしい」と伝える
山嵐との共闘〜結末
- うらなり君の送別会の朝、山嵐が「下宿を出ろ」と言った件について経緯を含めて謝罪してきた。坊っちゃんはずっと山嵐の机に置きっぱなしだった1銭5厘を自分の財布に仕舞って、2人で笑い合った
- 祝勝会(戦勝を祝う行事)で学校が休みとなり、山嵐が下宿にやって来て赤シャツと馴染みの芸者の話になる
- 生徒(赤シャツの弟)が山嵐を誘いに来て、一緒に祝勝会の余興を見に行くことになる。余興を見ていると喧嘩が起こり、坊っちゃんと山嵐が仲裁に入るも2人で警察に連行されてしまう
- 次の日の新聞で坊っちゃんと山嵐が生徒をそそのかして騒動を起こしたようなことが書かれてしまった。山嵐は新聞に掲載されるまでの流れが赤シャツに仕組まれているのではないかと推測する
- 数日後、山嵐が校長室で辞表を出すように促されたと聞いて、坊っちゃんも辞職しようとするが校長に止められる
- 山嵐と坊っちゃんは、赤シャツが芸者遊びをするところを押さえてこらしめる計画を実行する。赤シャツと野だが芸者と遊んだあとに宿屋から出て街から外れたところを捕まえる。会話ではらちが明かず、坊っちゃんと山嵐は鉄拳制裁に出る
- 坊っちゃんと山嵐はそのままこの土地を去り、坊っちゃんは鉄道会社の技手になった
- また、清とも再会を果たし、その後清は亡くなったことが明かされる

純文学は結末が曖昧なイメージがありますが、「坊っちゃん」は比較的ちゃんとしたラストがある…!
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夏目漱石「坊っちゃん」の舞台はどこか

作中では「四国」と書かれていますが、「坊っちゃん」の舞台は愛媛県松山市とされており、夏目漱石自身が松山の愛媛県尋常中学校で教師をしていた経験がもとになっています。
ここでは、夏目漱石「坊っちゃん」の舞台について以下の点から紹介します。
- 道後温泉本館
- 愛松亭
- その他

実際に「坊ちゃん」の舞台となった愛媛県松山市へ行ってきました。
道後温泉本館


国の重要文化財に指定されており、約3,000年の歴史を持つ「道後温泉本館」は、坊っちゃんが作中で泳いだ温泉場です。
長いこと改修工事をしている印象がありましたが、2024年12月に工事が完了しており、現在では建物の全体を見ることができます。

夜に道後温泉本館に行ったとき、湯河原温泉を舞台としている別作品の「明暗」の描写を思い出しました。
靄(もや)とも夜の色とも片付かないものの中にぼんやり描き出された町の様はまるで寂寞(せきばく)たる夢であった。自分の四辺にちらちらする弱い電灯の光と、その光の届かない先に横たわる大きな闇の姿を見較みくらべた時の津田にはたしかに夢という感じが起った。
夏目漱石「明暗」
「坊っちゃん」では建物の雰囲気について具体的な描写はありませんが、夏目漱石がこのような風景を見て作品を創作したかと思うと感慨深いものがあります。
愛松亭

坊っちゃんの下宿先のモデルとなったのが、実際に夏目漱石が下宿していた「愛松亭(あいしょうてい)」です。
現在では愛松亭の跡地に「漱石珈琲店 愛松亭」というカフェがあり、お茶を楽しめる場所となっています。



坊っちゃん団子も食べられる…!作中にも団子が出てきます。
なお、夏目漱石は愛松亭の下宿について「裁判所の裏の山の半腹にて眺望絶佳の別天地」としており、「坊っちゃん」のなかでも下宿について以下のような記述があります。
町はずれの岡の中腹にある家で至極閑静だ。
夏目漱石「坊っちゃん」
愛松亭の近くには国重要文化財である洋館「萬翠荘」や司馬遼太郎の作品に関連する「坂の上の雲ミュージアム」があり、文学好きには堪らないスポットです。
その他

松山市内には、道後温泉本館以外にも赤シャツとの釣りで野だが名付けた「ターナー島」や、坊っちゃんが移動で利用した「坊っちゃん列車」など作品に関連する場所があります。
また、松山市は正岡子規の生誕の地で、正岡子規と夏目漱石は友人であることも有名です。
正岡子規と夏目漱石は一時期同居しており、下宿先だった離れは「愚陀佛庵(ぐだぶつあん)」と名付けられました。
愚陀佛庵は現在は松山市立子規記念博物館に一部が復元されていますが、松山市によって再建が進行中で2026年8月頃の公開を目指しています。
参考:松山市|トップページ>市政情報>まちづくり>『坂の上の雲』まちづくり>『愚陀佛庵』の再建
「坊っちゃん」に限らず、夏目漱石ゆかりの場所が多くある愛媛県松山市。漱石好きや文学好きは一度は訪れたい場所の1つです。
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夏目漱石「坊っちゃん」の書き出し&名言

夏目漱石「坊っちゃん」の書き出し&名言をチェックしていきましょう。
【書き出し】
親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。
夏目漱石「坊っちゃん」
上記は、「草枕」や「吾輩は猫である」に並んで漱石作品のなかでも有名な書き出しです。

そして、この坊っちゃんの性格が物語を貫いているから本当に漱石が恐ろしい。
【名言】
本当に人間ほどあてにならないものはない。あの顔を見ると、どうしたって、そんな不人情な事をしそうには思えないんだが――うつくしい人が不人情で、冬瓜(とうがん)の水膨れのような古賀さんが善良な君子なのだから、油断が出来ない。
夏目漱石「坊っちゃん」
すると初秋(はつあき)の風が芭蕉(ばしょう)の葉を動かして、素肌に吹ふきつけた帰りに、読みかけた手紙を庭の方へなびかしたから、しまいぎわには四尺あまりの半切れがさらりさらりと鳴って、手を放すと、向むこうの生垣まで飛んで行きそうだ。
夏目漱石「坊っちゃん」
上記は漱石文学ならではの「人間の本質」と「風景描写の美しさ」の両方がよく出ている一説で、何度読んでも心に沁みるものがあります。
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夏目漱石「坊っちゃん」のレビュー・おすすめのポイント

夏目漱石「坊っちゃん」のレビュー・おすすめのポイントは、以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作者/作品名 | 夏目漱石/坊っちゃん |
| 初出 | 1906年 |
| ページ数 | 240ページ(新潮文庫) |
| 面白さ | ★ ★ ★ ★ ☆ |
| 読みやすさ | ★ ★ ★ ★ ★ |
| 忍耐度 | ★ ☆ ☆ ☆ ☆ |
| 初心者おすすめ度 | ★ ★ ★ ★ ★ |
| 見どころ | ・初心者にも読みやすいボリューム ・明るくて暖かい「帰りたい場所」のような作品 |
内容が面白いのもさることながら、ストーリー自体は200ページ以下という短さ!「これから純文学を読みたい」とお考えの方にもおすすめの1冊です。
次の章以降で、「見どころポイント」を紹介していきます。
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明るくて暖かい「帰りたい場所」
新潮文庫で文庫化された夏目漱石の作品は一通り読んでいますが、「坊っちゃん」を改めて読むと明るくて暖かい「帰りたい場所」のような印象を受けました。
「門」で描かれる徹底したどんよりさ、「道草」で感じる一面殺伐とした荒野、
後期の作品になればなるほど「三四郎に帰りてぇ」と思うわけですが
その帰りたい作品に近い佇まいを「坊っちゃん」からも感じます。
これは、作中に出てくる元女中の「清」の存在が大きく、両親と精神的に距離があった坊っちゃんを包み込むような存在が最後まで感じられるからです。
また、漱石文学の標準を考えると、主人公になりそうなのは三角関係の渦中にいる「うらなり君」ですが、「坊っちゃん」ではその関係を側から見る人物が主人公という気楽さもあります。

「道草」のなかで、「温かい人間の血を枯らしにいく」といった表現がありますが、その前なのかなと思います。
【関連記事】夏目漱石作品の読む順番は?初心者向けに徹底解説!前期三部作や代表作も紹介
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夏目漱石「坊っちゃん」に関するQ&A

最後に、夏目漱石「坊っちゃん」に関するよくある質問を解説するので、疑問を解消しましょう。
作中に登場する越後名物の飴とは?
夏目漱石「坊っちゃん」に登場する越後名物の飴とは、米飴と水飴を練って熊笹にはさんだ「笹飴」のことです。
笹飴のくだりは、坊っちゃんが四国へ出発する際に元女中の清に「お土産は何がほしい」と聞くシーンなどで出てきます。
主人公の「坊っちゃん」の由来は?
主人公が「坊っちゃん」と呼ばれているのは、元女中の清が「坊っちゃん」と呼んでいるからです。
なお、「山嵐」「赤シャツ」「うらなり」など、多くの主要人物があだ名で呼ばれています。
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まとめ

夏目漱石の「坊っちゃん」は、無鉄砲な性格を持つ主人公が東京から四国の中学校に数学教師として赴任し、生徒からの悪戯や他の教師との対立に立ち向かう物語です。
「坊っちゃん」の舞台は愛媛県松山市とされており、道後温泉本館や愛松亭などがモデルになっています。
夏目漱石や「坊っちゃん」について理解を深めたい方は、ぜひ松山市にも足を運んでみましょう。今回の記事を、読書ライフを楽しむ参考にしてください。


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